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仙台地方裁判所 平成3年(タ)5号 判決 1992年10月14日

原告

甲野太郎

右訴訟代理人弁護士

薬師寺典夫

佐藤正彦

伊藤恒幸

被告

甲野花子

右訴訟代理人弁護士

飯原一乗

主文

一  原告の訴を却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

一  請求

亡甲野一郎と被告との間の昭和六一年七月二六日届出による婚姻が無効であることを確認する。

二  事案の概要

1  原告は亡甲野一郎(昭和六一年七月三〇日死亡、以下「亡一郎」という)と乙川春子との間に生まれ、昭和二六年九月五日亡一郎の養子になったものである。

2  戸籍には、亡一郎は被告と昭和六一年七月二六日婚姻届出した旨(以下「本件婚姻」という)の記載がある(以上乙四による)。

3  原告は、本件婚姻届出の当時亡一郎は総胆管癌の末期的状態にあって意思能力を喪失しており、婚姻意思が全くなかったのに、被告が婚姻届出書を偽造してなしたものであると主張して、亡一郎と被告との右婚姻の無効確認を求める。

4  被告は、原告には右婚姻無効確認の訴の利益がないから、本件訴えは不適法であると主張する。

三  争点

原告が本件婚姻無効の訴えにつき法律上の利益を有するかどうか。

四  判断

婚姻無効の訴えは婚姻当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該婚姻が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は右訴えにつき法律上の利益を有しないと解するのが相当である(最高裁昭和六三年三月一日第三小法廷判決・民集四二巻三号一五七頁参照)。

本件において、原告は亡一郎の養子であり、被告の姻族一親等という身分関係があるにすぎないから、原告が本件婚姻の無効確認を求めるにつき前記法律上の利益を有するものでないことは明らかである。即ち、本件婚姻の無効により、原告は、自己の財産上の権利義務に影響を受けるとしても、その権利義務の前提として婚姻の無効を主張すれば足り、それを超えて他人間の身分関係の存否を対世的に確認する利害関係を有するものではないし、また、原告は被告に対しては民法八七七条二項に定める扶養を命ずる審判等の手続を経た場合に扶養義務を負うにすぎないから、本件婚姻が無効であることにより原告の身分関係に関する地位が直接影響を受けるものということはできない。

そうすると、原告の本件訴えは不適法であり、却下を免れない。

(裁判官 阿部則之)

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